~やさしい手~

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住宅型介護付き有料老人ホームに、長い間パートタイマーとして勤務していました。1日の労働時間は社員の方と同じですが、家庭の事情もあり、1週間のうち2日~3日の勤務でした。

介護の資格を取得したのは仕事にしようと思ったからではなく、将来自分の為に役立つであろうと考えたからでした。

家事支援・入浴介助・病院付き添い・行事企画、ご入居者のさまざまなニーズに対応してきました。

お元気だった方も加齢により、おひとりでの日常生活が困難になると、健常棟から介護棟へと移動する事になります。

長年住み慣れた広い居室から、必要最小限のベットとトイレ、テーブルとソファーがあるだけのせまい居室へと引っ越さなければなりません。日常の生活も制限され、食事も決められた時間、お風呂も週に3回のみ。でも、関わる頻度が高くなるほど、その方達の人となりに触れ、親密度は深くなっていきます。身体介護の方、軽度の認知症の方、私が担当していた階にも20名弱の、さまざま状態の方がいらっしゃいました。

入居者が楽しみにされていた事の一つが入浴の時間。

頭からつま先まで丁寧に洗わせて頂きます。髪の毛はゆっくりマッサージする様に、耳の後ろ、首筋、脇の下から脇腹は優しく、背中と足は力を込めて、足の指の間も丁寧に洗いあげていきます。シャワーで十分流した後は手引き歩行で湯舟へ。温かなお湯に、満ち足りた笑顔が浮かびます。

湯上り後はドライヤーで乾かしながら手ぐしでふんわりとブロー。

皮膚疾患があれば薬を塗布し、痛みのある個所には貼り薬を、爪が伸びていたら注意深く切らせて頂きます。

スタッフ2~3人体制で連携し、お一人20~25分位の時間制限で次々と入って頂くので、汗びっしょり、大変な業務です。

そんな中、入居者の方から嬉しい言葉を頂いていました。

「あなたの手はやさしい手ね」

無防備な裸の状態で身を任せていると、自分がどんな風に扱われているか判るのよ。と。

スタッフは皆一生懸命やっていると思います。でも、多分ゆとりがないんです。私は正社員の方の三分の一ほどの勤務。家にいる時間も、決してのらりくらりとしている訳ではないけれど、束縛されての重労働とは違います。

心のゆとりがやさしい手を作り出していたのだと思います。

ちょっと歩くペースを落として周りの景色や空に目をむけてみる。

季節の移り変わり、雲の流れ、黄昏時の空の変化、立ち止まって深呼吸して今この瞬間を楽しんでみる。いつもとは違う発見があったり、見えなかった何かが見えてきたり、本当に大切な事に気付く事も。

ゆとりを持つ事は心を穏やかにしやさしい気持ちにさせてくれます。

あたたかい言葉をかけて下さり、多くの学びを与えて下さった、尊敬する方達は次々と亡くなられて逝きました。

この職務に携わっている限り、避けては通れないものだと頭では解ってはいましたが、都度、深い悲しみを引きずる私は、上司から「感情移入しすぎる」と言われ、言葉もありませんでした。

おっしゃる通りでしたから。

報酬を頂く以上、現実を見つめ、気持ちを切り替えて業務に戻る。

知識・技術・寄り添う思い、強いメンタル、資格は取得したけれど、私にはメンタル面の強さを培い、切り替える事が最後まで出来ませんでした。

よくよく考えた末、私は仕事を辞めました。

多くの仲間に支えられ、施設での経験は沢山の学び、人生の大先輩との関わりは大きな財産になり、私を成長させてくれました。

 

季節は移ろい、空は高く、日も短く、夜庭の片隅では虫の合唱が聞こえます。秋は美味しいものも沢山ありますね

これから先、もし母の介護をする様になった時も「やさしい手」の私でいられる様に、そして心のゆとりを失わない様に、毎日を大切に、そして丁寧に過ごしていこうと思っています。

✨今日も最後までお読み頂きありがとうございました。✨